役員報酬を受け取らない場合のメリットと注意点

会社を立ち上げたばかりで資金繰りが厳しい、あるいは業績が思うように伸びず経営者としての報酬を受け取らない選択を考えていませんか。

足立区で事業を営む多くの経営者が、一度は直面するこの判断。自分の給料をゼロにすれば会社にお金が残るけれど、本当にそれで良いのか不安になりますよね。税金の負担は減るのか、将来の年金はどうなるのか、そもそも法律的に問題ないのか。

実は役員報酬を受け取らないという判断には、知っておくべきメリットとデメリットが複雑に絡み合っています。目先の資金繰りだけを見て決めてしまうと、後で思わぬ税負担に苦しんだり、老後の生活資金が足りなくなったりする恐れもあるのです。

この記事では、無報酬という選択が本当にあなたの会社にとって正しいのかを判断するための具体的な知識をお伝えします。株主総会の手続きから税務上のルール、将来設計まで、実務で必要なポイントを分かりやすく解説していきます。

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役員報酬を受け取らない場合のメリット

会社を立ち上げたばかりのとき、あるいは経営が厳しい局面を迎えたとき、経営者自身が給料をもらわない選択をするケースがあります。これは決して珍しいことではなく、実際に多くの経営者が一時的に報酬なしで会社を切り盛りしている現実があるのです。

自分の給料をゼロにすることで、本当に会社は良くなるのでしょうか。また、経営者個人にとってはどんな影響があるのでしょうか。

資金繰り・キャッシュフロー改善

会社を始めたばかりの頃は、売上が安定しないことが多いものです。毎月固定で出ていくお金が少しでも減れば、会社の懐事情はぐっと楽になります。経営者への報酬は会社にとって毎月の大きな支出のひとつですから、これをゼロにすることで会社にお金を残せるわけです。

特に創業初期や業績が不安定な時期には、手元資金をできるだけ多く確保することが経営の生命線になります。従業員の給料や仕入れ代金、家賃といった必ず支払わなければならない費用を優先し、経営者自身の取り分は後回しにする。この判断が会社を守ることにつながるケースは少なくありません。

また、銀行から融資を受けたいと考えている場合、決算書が黒字になっていると印象が良くなります。報酬をもらわないことで利益が出やすくなり、融資審査で有利に働く可能性もあるのです。ただし銀行側も、経営者が適正な報酬をもらっているかどうかはチェックしています。無理に黒字を作り出しているだけと見られる恐れもあるため、一概に良いとは言えません。

個人課税・社会保険負担の軽減

経営者として報酬をもらうと、当然ながら所得税や住民税がかかります。さらに健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料も、報酬額に応じて負担しなければなりません。報酬が高くなればなるほど、これらの負担も重くなっていきます。

報酬をゼロにすれば、所得税や住民税は発生しません。社会保険料も、報酬がなければ支払う必要がなくなります。会社としても、経営者の社会保険料の半分を負担する必要がなくなるため、会社側の支出も減ることになるわけです。

こうした負担軽減を目的に、あえて報酬なしを選択する経営者もいます。特に会社の立ち上げ期など、個人の収入がなくても何とかやっていける状況であれば、この選択肢は現実的な手段となります。

ただし本当にこれが得策なのかは、別の角度から検討が必要です。報酬をゼロにすることで会社側の税金負担が増えたり、将来もらえる年金が減ったりする可能性もあるからです。

役員報酬を受け取らない場合のデメリット・リスク

報酬をもらわないことにはメリットもありますが、同時に見過ごせないリスクも存在します。目先の資金繰りだけを優先して決めてしまうと、後で思わぬ落とし穴にはまることがあるのです。

法人税負担増加の可能性

会社の利益が大きくなれば、その分だけ法人税の負担も増えます。経営者への報酬は会社の経費として計上できるため、報酬を払えば利益が減り、結果として法人税も減るのです。

報酬をゼロにするということは、本来経費にできたはずの金額がそのまま利益に上乗せされることを意味します。会社に利益が多く残れば、法人税の負担が重くなる可能性があるわけです。

個人の税金や社会保険料は減っても、会社の税金が増えてしまえば、全体で見ると損をすることもあります。経営者個人と会社、両方の税負担を合わせてシミュレーションしないと、本当に得なのか損なのかは分かりません。

特に業績が好調で利益が出ているのに報酬をゼロにしていると、税務署から不自然に見られる可能性もあります。適正な報酬を設定し、会社と個人の両方でバランスよく税負担を分散する方が、トータルでは有利になるケースが多いのです。

社会保険・年金への影響

報酬をもらわないと社会保険に加入できなくなり、国民健康保険と国民年金に切り替える必要があります。一見すると保険料の負担が減って良さそうに思えますが、実はそう単純ではありません。

厚生年金と国民年金では、将来もらえる年金額に大きな差が出ます。厚生年金は会社と折半で保険料を払い、その分だけ将来の年金受給額も増える仕組みです。国民年金だけになると、老後にもらえる年金が大幅に少なくなる恐れがあります。

また家族がいる場合、厚生年金に加入していれば配偶者を扶養に入れることができ、配偶者の保険料負担がゼロになります。しかし国民年金に切り替えると、配偶者も別途国民年金保険料を払わなければなりません。結果的に世帯全体の保険料負担が増えてしまうこともあるのです。

健康保険についても、厚生年金と同様の問題があります。厚生年金の健康保険では扶養制度が使えますが、国民健康保険には扶養という概念がありません。家族全員分の保険料を払う必要が出てくるため、かえって負担が重くなる可能性があります。

将来の報酬・退職金制度への影響

経営者が会社を辞めるとき、退職金をもらうケースがあります。役員退職金の適正額は一般的に、最終報酬月額に勤続年数と功績倍率をかけて計算されます。

もし報酬をゼロにしていたり極端に低く設定していたりすると、この最終報酬月額が少なくなるため、退職金の金額も少なくなってしまいます。何十年も会社を経営してきたのに、退職金がほとんどもらえないという事態にもなりかねません。

また報酬をもらわない期間が長く続くと、経営者個人の信用にも影響が出ることがあります。住宅ローンやクレジットカードの審査では、安定した収入があるかどうかが重要な判断材料になります。報酬がゼロだと収入証明ができず、ローンが組めないといった不便が生じる可能性もあるのです。

役員報酬を受け取らないかどうかの判断基準と検討ポイント

報酬をもらわない選択をするべきかどうかは、会社の状況や経営者個人の事情によって変わってきます。単純に良い悪いで判断できるものではないため、慎重に検討することが大切です。

損益・税負担のシミュレーション

まず考えるべきは、報酬をゼロにした場合とある程度もらった場合で、税負担がどう変わるかという点です。会社の法人税と経営者個人の所得税・住民税、そして社会保険料を合計して、どちらが有利になるかを計算してみる必要があります。

利益が少ない年であれば、報酬をゼロにすることで法人税の負担を減らせるかもしれません。しかし利益が十分に出ている年であれば、適正な報酬を設定して経費計上した方が、トータルの税負担は軽くなることが多いのです。

また報酬をもらうことで、会社側の社会保険料負担は増えますが、将来の年金受給額も増えます。目先の支出だけでなく、長期的な視点で考えることが重要です。

税理士に相談してシミュレーションを行うことで、どのパターンが最も有利になるかを具体的な数字で確認できます。足立区で会社を経営されている方なら、足立区税理士に相談することで、より実情に即したアドバイスがもらえるでしょう。

生活費・将来設計との整合性

もうひとつ忘れてはならないのが、経営者個人の生活です。報酬をゼロにしても当面生活できるだけの貯金があるのか、配偶者や家族に収入があるのか、そういった現実的な問題をクリアできるかどうかが前提になります。

生活費が足りなくなって、会社からお金を借りるという手もあります。しかしこれは役員貸付金という扱いになり、税務上は会社に認定利息が計上されます。利息分に対して法人税がかかるため、かえって税負担が増えてしまう恐れがあるのです。

また将来の年金や退職金のことも考えておく必要があります。若いうちは先のことなど考えずに無報酬でも構わないと思うかもしれませんが、老後の生活資金は確実に必要になります。国民年金だけでは生活が厳しくなる可能性が高いため、厚生年金に加入できる報酬設定を検討する価値はあります。

経営の立て直しのために一時的に報酬をゼロにするのは仕方ない場合もありますが、それが長期間続くのは避けるべきです。会社が安定してきたら、適正な報酬をもらうように切り替えていくことが大切です。

役員報酬を受け取らない際の設定・変更ルールと手続き

報酬をゼロにする、あるいは後から金額を変更する場合には、きちんとした手続きを踏む必要があります。適当に決めてしまうと、税務上のトラブルを招く可能性があるため注意が必要です。

報酬改定の時期と制約(期首3ヶ月以内など)

役員への報酬は、原則として事業年度を通じて毎月同じ金額を支払わなければなりません。これを定期同額給与といいます。年度の途中で勝手に増やしたり減らしたりすることは、基本的にできないルールになっています。

報酬の金額を変更できるタイミングは、事業年度が始まってから3ヶ月以内と決められています。たとえば3月決算の会社なら、4月から6月末までの間に変更手続きを済ませなければなりません。この期限を過ぎてから変更すると、変更した差額分が経費として認められなくなり、結果的に税金の負担が増えてしまいます。

報酬をゼロに変更する場合も、この期限内に手続きを行う必要があります。会社設立1年目の場合は、設立日から3ヶ月以内に報酬額を決めなければなりません。この期間内に決めなかった場合、その年度は報酬を経費として計上できなくなるため、必ず期限を守ることが重要です。

例外的に期限外でも変更できるケースもあります。たとえば業績が著しく悪化して経営が危機的状況に陥った場合や、役員の役職が大きく変わった場合などです。しかしこうした例外に当てはまるかどうかは、税務署が厳格に判断します。安易に期限外で変更すると、後でトラブルになる可能性が高いため、できるだけ期限内に対応するべきです。

株主総会決議と議事録の要件

報酬の金額は、株主総会で決める必要があります。会社法で定められたルールであり、勝手に経営者が決めることはできません。たとえゼロにする場合でも、株主総会を開いてその旨を決議しなければならないのです。

株主総会では、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の半数以上の賛成で可決されます。小規模な会社で株主が少ない場合、実際には形式的な手続きとなることが多いですが、それでもきちんと手続きを踏むことが求められます。

株主全員が同意している場合には、実際に集まって会議を開かなくても、書面やメールで同意を得ることで決議とみなすことができます。ただしこの場合でも、議事録は必ず作成しなければなりません。

議事録には、開催日時、場所、出席者、決議内容などを明記します。報酬をゼロにすることを決めたなら、その旨をはっきりと記載し、出席した役員全員が署名・捺印する必要があります。この議事録は会社に10年間保管しなければならず、税務調査の際に提出を求められることもあります。

議事録がなかったり記載内容に不備があったりすると、税務署から報酬の経費計上を否認される可能性があります。たとえゼロ円でも、きちんと手続きを残しておくことが大切です。

定期同額給与・事前確定届出給与の留意点

役員への報酬を損金として認めてもらうためには、定期同額給与か事前確定届出給与のいずれかの形式に従う必要があります。

定期同額給与は、毎月同じ金額を支払う方式です。月給のようなイメージで、最も一般的な報酬の形です。この方式なら税務署への届出は不要で、株主総会で決めた内容を議事録に残しておけば問題ありません。

一方、事前確定届出給与は、賞与のように年に数回まとめて支払う方式です。支払う時期と金額をあらかじめ税務署に届け出ることで、損金として認められます。届出期限は株主総会から1ヶ月以内、または事業年度開始から4ヶ月以内のいずれか早い日までです。

事前確定届出給与を使う場合は、届け出た金額と支払日をきっちり守らなければなりません。1円でも金額が違ったり、支払日が1日でもずれたりすると、全額が経費として認められなくなるリスクがあります。非常に厳格なルールなので、確実に守れる自信がない場合は、定期同額給与を選ぶ方が無難です。

報酬をゼロにする場合は、基本的には定期同額給与をゼロにするという扱いになります。事前確定届出給与との併用も可能ですが、手続きが複雑になるため、専門家のアドバイスを受けた方が安心です。

役員報酬を受け取らないとは何か

そもそも報酬をもらわないというのは、法的にどういう位置づけになるのでしょうか。また会社法や税法では、どのように扱われるのでしょうか。

無報酬役員の定義と法的な位置づけ

役員に報酬を払わないこと自体は、法律で禁止されていません。会社法にも税法にも、必ず報酬を支払わなければならないという規定はないのです。株主総会や社員の同意を得て適切な手続きを経れば、報酬をゼロにすることは可能です。

ただし法的に問題がないからといって、実際の影響がないわけではありません。社会保険の取扱いや税金の負担、さらには経営者個人の信用にまで影響が及ぶ可能性があります。

無報酬の役員は、法律上は役員としての地位を持ちながら、報酬をもらっていない状態です。名目だけの役員として登記されることもありますが、この場合でも役員としての責任は免れません。会社に何か問題が起きたとき、無報酬だからといって責任を逃れられるわけではないのです。

実際に経営に関与しているかどうかに関わらず、登記されている以上は役員としての善管注意義務や忠実義務を負います。会社の不正行為が発覚した場合、たとえ報酬をもらっていなくても、監督責任を問われる可能性があります。報酬の有無と法的責任は別物だということを、しっかり理解しておく必要があります。

会社法・税法・会計上のルール

会社法では、役員報酬は株主総会で決めることとされています。定款に定めることもできますが、実務上は株主総会で決議するケースがほとんどです。報酬の総額を決めるだけでも構いませんし、各役員の個別の金額まで決めることもできます。

税法上は、役員報酬を損金として認めてもらうために、定期同額給与などの要件を満たす必要があります。報酬をゼロにする場合でも、株主総会で決議して議事録を残しておくことが重要です。税務調査で確認される可能性があるため、きちんと記録を残しておかないと、後で説明できなくなります。

会計上は、役員報酬は人件費として扱われます。報酬がゼロであれば、当然ながら人件費もゼロとして計上されます。財務諸表を見たときに、役員報酬がゼロだと経営の実態が分かりにくくなることもあります。銀行融資を受ける際など、適正な報酬を払っているかどうかをチェックされることもあるため、長期間ゼロにし続けるのは避けた方が良いでしょう。

また役員報酬をゼロにしても、役員としての地位は変わりません。会社の重要な意思決定に関与する立場であり、株主に対して責任を負う立場です。報酬がないからといって、役員としての義務や責任が軽くなるわけではないのです。

役員報酬を受け取らないケース別の実務対応

実際に報酬をもらわない選択をする場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。会社の規模や状況によって、取るべき対応は変わってきます。

非上場・小規模企業での運用

株式を公開していない中小企業では、株主と経営者が同じ人物であることが多いです。こうした会社では、報酬をゼロにする判断も比較的柔軟に行えます。

創業直後で売上が立っていない時期は、会社にお金を残すために無報酬を選ぶケースが多く見られます。設立から数ヶ月はほとんど売上がないという状況も珍しくないため、この期間は報酬なしで乗り切る経営者は少なくありません。

ただし無報酬の期間が長引くと、前述したようなデメリットが顕在化してきます。会社の業績が安定してきたら、適正な報酬を設定するように切り替えていくことが望ましいです。

小規模企業では、株主総会も形式的なものになりがちですが、それでも議事録はきちんと作成しておきましょう。税務調査が入ったときに、適切な手続きを踏んでいることを証明する必要があるからです。

また家族経営の会社では、配偶者や子供を役員にして報酬を支払うことで、所得を分散する節税対策を取ることがあります。この場合も、実際に経営に関与しているかどうかが重要です。名目だけの役員に高額な報酬を払うと、税務署から否認される可能性があるため注意が必要です。

足立区のような地域で事業を営む中小企業の場合、地域の税理士に相談することで、実情に合ったアドバイスを得られます。報酬の設定は経営判断として重要なポイントですから、専門家の知見を活用することをお勧めします。

>>役員報酬で税金かからない条件と設定方法

役員報酬を受け取らない場合のまとめ

役員報酬を受け取らないという選択は、法律上は可能ですが慎重な判断が必要です。会社の資金繰りを改善できる一方で、法人税の負担が増えたり将来の年金が減ったりするリスクもあります。

報酬をゼロにする場合でも株主総会での決議と議事録の作成は必須であり、事業年度開始から3ヶ月以内に手続きを完了させなければなりません。また社会保険に加入できなくなるため、国民健康保険と国民年金への切り替えが必要になります。

創業初期や業績悪化時には有効な選択肢となりますが、長期間続けると退職金が少なくなったり個人の信用に影響が出たりする可能性があります。会社の状況と個人の生活、そして将来設計を総合的に考えて判断することが大切です。税理士に相談してシミュレーションを行い、本当に有利なのかを確認してから決めることをおすすめします。

項目 メリット デメリット
資金面 会社にお金が残り資金繰りが改善する 法人税の負担が増える可能性がある
税金・保険 個人の所得税や住民税、社会保険料がゼロになる 国民健康保険と国民年金に切り替えが必要で、世帯全体の負担が増えることもある
将来への影響 一時的な経営改善策として株主に誠意を示せる 将来の年金受給額が減り、退職金も少なくなる
手続き 定期同額給与なら税務署への届出が不要 株主総会決議と議事録作成が必須で、期首3ヶ月以内に手続きが必要
信用面 決算書が黒字になり融資審査で有利になる場合がある 個人の収入証明ができずローンが組めなくなる可能性がある
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